リニア南アルプストンネルの問題点
リニア新幹線で南アルプスに穴をあけて大丈夫なの?
13の3000mのピークが連なる南アルプス。
山脈南部は道路や送電線など横断する人工物のない、国内でも希少な地域です。
そこにリニア中央新幹線のトンネルが掘られようとしています。
大丈夫なのでしょうか?
3つの誤解に答えます。
誤解1 トンネルだから環境は壊れないでしょ?
誤解2 もう決まったことでしょ?
誤解3 活断層があってもリニアなら平気でしょ?
南アルプストンネルは問題だらけ!
誤解1 トンネルだから環境は壊れないでしょ?
川がかれる 谷が埋まる

シナノコザクラ
南アルプスは日本有数の多雨地帯。
豊かな森と独特の生態系が育まれてきました。
そこを貫通するトンネルができると川がかれ、希少な動植物の生存も脅かされます。
駿河湾に注ぐ大井川への影響は深刻で、水量が最大で毎秒2t減ると試算されています。
また掘り出された大量の土砂は、静岡側では大井川上流の谷に高さ70m盛り土される計画があります。
自然への影響だけでなく、土石流の原因にもなります。
誤解2 もう決まったことでしょ?
ずさんな計画で工事は足踏み

ヤマトイワナ
造山活動の激しい南アルプスは、さながら崩壊地の展示場。
新たな道路整備は土砂災害との不毛な闘いを招きます。
トンネルから大量の土砂を10年以上、ダンプカーで残土置き場まで運ぶ計画になっていますが、搬出路はどこも未整備で、残土置き場の決定はこれからです。
2015年12月に山梨側の早川町でトンネル起工式を終えたものの、ずさんな計画で工事は足踏みしています。
誤解3 活断層があってもリニアなら平気でしょ?
直下の断層がずれたらアウト トンネルからの脱出も困難
最高時速約500kmのリニア中央新幹線は多くの活断層をまたぎます。
そのうちの一つでもずれたら、リニアは尻もちをついたり側壁に衝突したりして大事故に発展しかねません。
また、長さ約25kmの南アルプストンネルには、
途中、5つの非常口が予定されていますが、出口は山の中。
緊急停止装置が運よく作動しても、中間部で立ち往生すれば、外部への脱出に高低差約370mの坂道を登らなければなりません。
リニアの乗客は最大1000人です。
長野県大鹿村
「日本で最も美しい村」が工事プラントに変貌

小渋川から見た赤石岳
赤石岳をのぞむ自慢の景観が、リニア新幹線の橋梁と送電鉄塔で台無しに。
村内に4つの坑口が予定され、300万㎥の土砂を搬出するため、1日最大1736台のダンプが村を10年以上行き交うことになる。
ウェストンが赤石岳を目指した道も残土置き場に。
山梨県早川町
南アルプス街道がダンプ街道に

南アルプストンネルの山梨県側坑口(2016年3月)
3つの坑口が予定され、326万㎥の土砂が排出される。
搬出のため早川沿いの一本道「南アルプス街道」を1日最大片道464台のダンプが10年以上通ることになる。
新たに芦安方面へトンネルを掘り、残土で芦安側の谷を埋め、
駐車場を築く計画もある。
静岡県大井川源流
山中に忽然と出現する工事村

残土置き場予定地の一つ。
林道上に高さ70m、長さ500mに渡って土砂が積み上げられる予定
大井川は最大で毎秒2tも減水する。
3つの坑口から360万㎥の土砂が排出され、登山基地「二軒小屋」周辺の川原に7カ所の残土置き場と700人余の作業員を収容する宿舎の建設が予定されている。
リニア中央新幹線の「南アルプストンネル」概念図

「釜沢」と「新倉」はリニア新幹線が一瞬、地上に出る部分。
「二軒小屋」とあわせた3カ所がトンネル掘削工事の主要基地になる
【南アルプストンネルの概要】
長さ:約25km 幅:約13m 非常口:5カ所 地表からの深さ:最大1400m
リニア中央新幹線計画の概要
【東京-名古屋間】
・先行開業予定年:2027年
・ 移動時間:最速40分(東京-大阪間は67分)
・ トンネル率:約86%
・ 事業主:JR東海
・ 総工費:約5.5兆円(東京-大阪間は約9兆円)
・ 南アルプストンネルの施工業者:大成建設、鹿島建設ほかの事業体
「明るい未来の」超電導リニアとは
超伝導磁石で車体を浮かせるリニア新幹線の技術は、新幹線の3倍以上の電力を使います。
過去には磁界が切れる現象で何度も実験に失敗し、車体の全焼事故もありました。
時速500kmの走行で運転手はいません。
原発同様、「多重の防護で安全を図る」と説明されています。
第二のスーパー林道になるおそれ

読売新聞記事を撮影
1980年に完成した南アルプススーパー林道は、
雪解けや豪雨に伴う山崩れで工事が中断し、工期は予定の5年から13年に延び、工費も当初の2.5倍の48億9千万円にふくらみました。
山梨県早川町から芦安に至る山あいの道路造成工事は、
第二のスーパー林道になりかねません。
●「リニアで南アルプスを壊さないで」登山者によるアピール文への賛同を集めています。
詳しくはコチラまで → ★URL http://minamialps.mygarden.jp/
●カンパのお願い
リーフレットやポスター作成など活動費用にあてさせていただきます
みずほ銀行 東青梅支店 (普)1342333 リニア新幹線を考える登山者の会
発行日:2016年7月
作成:リニア新幹線を考える登山者の会
〒146-0082 東京都大田区池上5-7-5(治療院「結」気付)
tel/fax:03-3752-4717 e-mail:tozansyarinia@gmail.com
blog:http://tozansyarinia.seesaa.net/ twitter:@tozansyarinia
発行:「リニアで南アルプスを壊さないで」登山者アピール実行委員会
★URL http://minamialps.mygarden.jp/

コハクラン
リニア新幹線と南アルプス関連情報
リニア中央新幹線がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!
https://www.youtube.com/watch?v=u-cLZ2m6324&feature=share
*リニア新幹線の問題をわかりやすく解説!
参考文献
橋山禮治郎『必要か、リニア新幹線』(岩波書店、2011年)
樫田秀樹『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社、2014年)
橋山禮治郎『リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」』 (集英社新書、2014年)
関連記事
宗像充「南アルプス貫くリニア計画 着工まであと2年」(「岳人」2012年6月)
宗像充「南アルプスをリニアが貫くとき―破壊される現場を歩く」(「世界」2012年9月号)
宗像充「『日本で最も美しい村』とリニア中央新幹線」(「望星」2013年5、6月号)
宗像充「どうなる? リニア新幹線計画と南アルプスの未来」(「山と渓谷」2015年1月号)
宗像充「リニアで南アルプスに行きますか?」(「ワンダーフォーゲル」2015年12月号)

柏崎刈羽原発から実験線へと電気を運ぶ50万ボルトの巨大送電線
登山者たちの取り組み
- 2014年6月26日 南アルプスとリニアを考える市民ネットが静岡市内で発足集会。山田哲哉さん(山岳ガイド)が発言。
- 2014年10月17日 国土交通省がリニア中央新幹線の工事実施計画を認可。
- 2014年9月10日 静岡県山岳4団体(静岡県山岳連盟、静岡市山岳連盟、静岡県勤労者山岳連盟、日本山岳会静岡支部)が静岡県知事に、南アルプス地域の保全がトンネル工事に優先すると要請。
- 2014年9月25日 静岡市の集会「南アルプスと中央新幹線」で白籏史朗さん(山岳写真家の)が発言。
- 2015年5月20日 リニア新幹線を考える登山者の会が都内(モンベル渋谷店)で集会「南アルプスは大丈夫?」を開催。
志水哲也(山岳写真家)さんが発言。 - 2015年12月10日 リニア新幹線を考える登山者の会が都内で集会「リニアが壊す南アルプス」を開催。
- 2015年12月18日 南アルプストンネル山梨県側早川町で起工式(着工)。
- 2016年6月3日 静岡県山岳連盟、静岡市山岳連盟、静岡県勤労者山岳連盟、日本山岳会静岡支部、南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク静岡の5団体が、南アルプスの環境保全に係る公開質問状を静岡県知事に提出。

立見も出たモンベル渋谷店での集会
「リニアで南アルプスを壊さないで」登山者アピール実行委員会、とは
満足な議論もなされないまま見切り発車で始まったリニア中央新幹線工事。
南アルプスならではの登山とその自然を次世代に引き継ぐには、南アルプストンネルとその関連工事は中止するしかありません。
アピール運動はリニア新幹線を考える登山者の会が呼びかけ始まりました。
24人の登山家とともに2016年中に1000人を目標に賛同者を集め、工事の即時中止を訴えます。

2015年2月に行われた大鹿村釜沢でのボーリング調査の様子。
2008年の調査では騒音のため一戸が移転。